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マウス開発研究室

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
国立遺伝学研究所

国立遺伝学研究所におけるマウス系統開発維持事業

系統維持事業の経緯

昭和26年に北大理学部より吉田俊秀元細胞遺伝部長によって、ラットおよびマウス約10系統が移され、国立遺伝学研究所におけるネズミの系統保存が始まりました。その後, 外国より輸入した系統や、海外学術調査で採集した野生ネズミが加わり規模が大きくなりました。

昭和50年には遺伝実験生物保存研究施設が発足し、近交系マウス・ラット系統およびテラトーマ高発系マウス系統の維持が始まりました。

昭和59年に国立遺伝学研究所が国立大学共同利用機関へ移行したのに伴い、遺伝実験生物保存研究センターとして改組され、同時に設置された哺乳動物保存研究室においてこれらの系統維持業務が行われてきました。基準系、突然変異系およびH2コンジェニックマウスの系統維持は、「がん重点・実験動物委員会」の援助も得てこの研究室で続けて行なわれました。

また、昭和60年度から系統保存費として「免疫遺伝学研究用マウス系統維持事業費」が認められ、マウスの野生由来系統、野生マウス由来のH2遺伝子複合体を導入したコンジェニック系統および染色体組換系は第1ネズミ飼育舎で維持されてきましたが、これらの系統の一部は帝王切開法および受精卵移植法によりSPF化され、センターのネズミ附属棟に移されました。

昭和57年よりマウス受精卵の凍結保存業務を開始し、また、平成8年度から「マウス胚凍結保存事業費」が認められたのを機に、凍結胚によるマウス系統保存事業を本格的に開始しました。

平成9年度には、センター名が系統生物研究センター、研究室名が哺乳動物遺伝研究室に改称され、マウス系統維持及び分譲事業を行ないました。平成9年度に、ネズミ附属棟のマウス系統の一部に肺炎パスツレラ菌の感染が認められたことから、全系統を旧第1ネズミ飼育舎に移し、凍結胚移植による清浄化を行いました。

平成15年度に新たに動物飼育実験棟が完成し、清浄化された全てのマウス系統を新施設に移し、その後マウスは全てSPF環境下で飼育されるようになりました。

令和元年度には、遺伝研の改組に伴い、遺伝形質研究系 マウス開発研究室が事業を引き継ぎました。その際、マウスの系統の保存は継続するものの、その分譲事業は一部を除き大半が理化学研究所バイオリソースセンターに移管されることになりました。そのかわり、遺伝研では多様なマウス系統、特に野生系統を用いた研究・表現型解析を支援する事業に注力することになりました(生物遺伝資源マウス事業)。その際に、リソースとして野生系統8種類を遺伝的に混合した野生由来ヘテロジニアスストック(WHS)を新たに加えました。


マウス微生物グレードについて

生物遺伝資源マウス事業

生命科学はゲノム情報の解明に伴い、単純な変異により生じる表現型異常にとどまらず、より複雑な多因子疾患の原因解明が急務となりつつあります。そのためには複雑なシステムの理解や遺伝のメカニズム解明が求められるようになってきました。

国立遺伝学研究所では、その歴史の中で世界各地から野生マウスの採集と系統樹立を進めてきました。これらの系統は、従来の標準的近交系統にはみられないユニークな遺伝特性を示しています。特に野生由来の系統はミシマバッテリーと呼ばれ、行動の研究等でその有用性が示されてきました。

令和元年度より、マウス開発研究室が新たに事業を担当し、国内外の大学や研究機関を対象に、これらのミシマバッテリーやその関連系統を用いた表現型解析や分子遺伝学的解析について、共同研究として遺伝研内で研究が出来るように支援することになりました。

新しい実験用マウス系統の開発事業

ゲノム配列解読後の生命科学の重要な研究課題は、ゲノム配列と生物機能の関係解明です。そのためには、特定の遺伝子機能に障害を持つ突然変異系統に加えて、進化的時間を経て多数の遺伝子に塩基置換が蓄積し、多様な表現形質を示す生物系統の整備が必要となっています。

国立遺伝学研究所では、長年にわたって世界各地から野生マウスの採集と系統育成を行ってきました。これらの系統は、従来の標準的近交系統にみられないユニークな遺伝特性を持っています。マウス開発研究室では、ゲノム配列と生物機能の関係を体系的に明らかにするための新世代の生物遺伝資源として、遺伝的に起源の異なった系統の間でゲノムを混合した野生由来ヘテロジニアスストック(WHS)などを作製しています。